経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるブログ

12/3の日経

 7-9月期の法人企業統計は、売上高が前期比で2期連続でのマイナスだった。製造業は前期と同じ-0.5%の低下幅、非製造業は前期の-1.2%の後の0.0%だった。売上高人件費比率は、景気減速時に見られる上昇となった。賃上げは、売上増が前提だから、先行きが心配だ。端的に言って需要不足なので、財政は緊縮をしないくらいがリーズナブルだろう。マイナス成長の7-9期GDP1次速報の取柄は、設備投資の伸びだったが、法企の結果からすると下方修正になりそうで、状況は更に悪くなった。

 11月の消費者態度は、前月比+1.7と高めの伸びで、今年前半の物価高に伴う低下前の水準を回復した。物価を反映する「暮らし向き」の改善の大きさが象徴する。ただし、足元では円安がぶり返していて、物価への悪影響が心配される。こうして見れば、7月の利上げのチャンスを躊躇して、流れを壊した植田日銀のセンスの悪さが悔やまれる。あの時なら、利上げなら円高の雰囲気があったわけで、為替のように思惑で強く動くものを是正するには、勝負勘が必要である。

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(今日までの日経)
 物価高対策の地方交付金 自治体、事務コスト増。12月利上げ、日銀地ならし。成長率・金利論争再び。基礎年金26年度、1.9%増。銅、高騰止まらず、円安響く。悪化する若者の心の健康 女子で顕著。

サナエノミクス・現実的な財政と金融

 2025年度予算の補正が決まり、前年度の補正後と比較すると、基礎収支の赤字は4.1兆円の改善であった。すなわち、若干の緊縮財政が行われ、緩やかながら財政再建は進んでいるわけだ。どうして、これで財政破綻の危険だの、インフレの加速だのと叫ばれなければならないのか。雰囲気で議論するのではなく、中身を測って議論したいものだ。積極財政派の主張の粗さが雰囲気を悪くしてもいるけどね。

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 10月の商業動態・小売業は、前月比+1.8と伸びたが、夏場の低下で、今年前半の水準にも達していない。GDPの消費は、サービスで支えられていて、モノほど悪くはないが、2024年の勢いは失われている。こうして見ると、イシバノミクスで定額減税をやめたのは拙かったと思えてくる。物価高での財政出動は間違いという人も多いが、現実は、緊縮でブレーキをかけるのに成功していたのであり、補正は、それを戻すような位置づけになる。

 10月の鉱工業生産は、前月比+1.4で、10-12月期は+1.2を確保しそうである。鉱工業生産は極めて緩やかな増加傾向にある。財別では、消費財は、今年前半に水準を上げた分を落としていく形であり、建設財は、住宅着工の落ち込みで下げた分を取り戻す形だ。10月の住宅着工は、大きく伸びて、規制強化による駆け込みと落ち込みから脱した。元の水準に回復して、やれやれである。

 10月の労働力調査は、雇用者は前月比+16万人で順調だった。ただ、今年度の前半は、月平均が4万人ほどと勢いが弱まっていた。新規求人倍率も、同様に弱く、前半はマイナス続きで、10月も前月比-0.02だった。雇用は、賃上げや人手不足はあるが、失業率は、わずかに上がっている。ありていに言って過熱感はなく、今回の補正でインフレ加速を心配するような状況ではない。

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 今の局面での長期金利の上昇は、財政悪化の実態がないのだから、植田日銀のハト過ぎる政策が円安を呼び、それに物価高が伴うというリスクからではないか。もっとも、今の長期金利の水準が、日銀の目指す物価上昇率と比べて、高過ぎるわけでもない。高市政権としては、低金利に拘っているような現実離れした印象を払拭することが必要だろう。財政は、とりまきが粗いことを叫んでいても、現実的にしたのだから。


(今日までの日経)
 こころの不調、経済に霧。米マイクロン、広島にAI半導体新工場。大型補正、市場の信認問う 遠のく基礎収支黒字化。次世代造船、国内5社連合 世界で競争力。補正予算案、新規国債11.6兆円 税収2.9兆円上振れ。日銀、経常利益13%減。

11/26の日経

  9月の人口動態速報・出生は、過去1年間の前年同月比が-3.2%と、また少しマイナス幅が縮まった。合計特殊出生率なら1.20くらいの水準だ。他方、婚姻は+2.3%まで浮上した。このまま2年連続で増加してほしいものである。初の女性首相が誕生したが、少子化対策というよりは人口減対応に重点が移ったように感じられる。少子化は、まだ下げ止まってないし、水準は深刻だ。諦めてはいけない課題だと思うがね。

(図)

(今日までの日経)
 長期金利、初の日中逆転。ラピダス、第2工場建設でも見えぬ顧客。「国家戦略技術」を創設。日本株 不安収束せず連日の値幅1000円超。サナエノミクスの分水嶺

7-9月期GDP1次・インフレにならない補正予算

 経済対策の顛末をめぐる日経の報道が本当なら、高市首相・片山財相のコンビは、なかなかやるね。ポイントは、積み上げるためのタマ(施策)を自分で探し、どこまでならインフレにならないかを意識しつつ、国債の新規発行ラインを24年度の発行総額を下回る形にしたところだ。基本ができていて、バラマキのインフレ加速で円安・債券安と囃すエコノミストよりは、ずっと賢いと思うよ。

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 バラマキで困るのは、長期金利が跳ねてしまうことだが、補正予算の規模が大きくなることと、国債発行が多くなることは、必ずしもリンクしない。税収・税外収入や不要が増えていたり、特別会計とのやり繰りなどで、小さく済むことがあるからだ。そうなれば、国債の需給が引き締まって長期金利が高騰するわけもなく、経済対策を材料にした目先の金利上昇も思惑に過ぎなくなる。それで儲ける高等戦術もあるとは思うが。

 補正予算の評価が難しいのは、どれだけ実物や資金の需要に結びつくか分からないところにある。一般会計から自賠責におカネを出したり、予備費を積んだりしても、資金の置きどころが変わるだけなので、需要の動きは限られたものになる。産業政策にしても、執行に詰まって不要になったり、基金に置くだけだと、意味が薄い。本予算の組み方にもよるが、ざっと見て、インフレを加速するとは思えない中身だった。

 今回の補正で残念だったのは、子ども給付とか公共料金の補助とか、ありもので積み上げたことだ。再分配の制度インフラがないという宿痾がまた露呈してしまった。バラマキにも経済的な社会問題を解決するワイズスペンディングがあることは、「祝福を君に」で示したとおり。低所得層への分配を意識しないと、デフレ時代によく言われていたように、貯蓄に回るだけとなり、国債の需給が締まることもない。

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 7-9月期GDPで安堵したのは、名目消費で前期比+0.4%を確保できたことだ。商業動態・小売業が悪く、インフレ加速どころの強さがないからだ。形態別に見ると、耐久財と非耐久財はマイナス、半耐久財が全体並み、サービスが大きめのプラスだった。気になるのは、海外での直接購入が寄与度の1/4を占めていることだ。日本人出国者も前年同月比で15%弱で伸びているものの、いわゆるデジタル赤字も増えているのではないか。

 いずれにせよ、消費の拡大は成長のための課題であり続ける。とりわけ、内需に結びつくものにしたい。例えば、ガソリンを安くすることと、非正規に育児休業給付を出すこととと並べれば、輸入への影響の違いが分かるだろう。税と社会保険料の自然増の中で、再分配は、年々、増やしていかなければならない。本予算の編成、次の補正予算と、準備の時間は短い。その場しのぎでない政策が求められる。

 

(今日までの日経)
 財務省案「しょぼすぎる」 高市首相が認めず、経済対策自ら上乗せ。補正予算案の一般会計歳出は17.7兆円。予備費7000億円。長期金利急騰、一時1.835%  円下落157円台後半。子ども1人2万円給付へ。柏崎刈羽の再稼働容認へ。水産物、中国が輸入を事実上停止。自賠責積み立てで6000億円の特会返還検討。コロワイド・値上げをすると客数が減る。高くて売れぬ「工場産野菜」。

11/19の日経

 7-9月期GDPは、実質年率で前期比-1.8%と、それなりに大きなマイナス成長だった。原因は、住宅と純輸出の減で、住宅は一時的なものだからまだしも、純輸出は仕方がないで済まないところがある。トランプ関税の影響はあるが、前期に伸びた反動もあって、財貨輸出の水準はさほど悪くはない。問題は、サービス輸入が着実に増大していることだ。いわゆるデジタル赤字である。円安なのに買わずにいられないのはきつい。国内の設備投資で伸びているのはデジタルだから、海外に逃げている部分もあろう。デジタルサービスの国産化も、産業政策の重要課題と思われる。

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(今日までの日経)
 中国、官民一斉に対日威圧。ファーウェイ、半導体網強化。都がアプリで「1万円相当」付与調整。スイスフラン「安全通貨」独走。米関税響き景気減速 7~9月実質GDP、年率1.8%減。韓国財閥、85兆円国内投資。

経済対策はお金を使うのに苦労する

 昔、経済対策で全生徒にパソコンを配ってはどうかという愚策があった。そんな一気の供給力はないし、需要の急増と急減で産業を壊しかねない。馬鹿な思いつきだけど、安全保障の投資でAIを構築するとして、GPU半導体は確保できるものなのか。このように、補正予算で規模を膨らますのは簡単でも、予算執行のフィージビリティも考えないと、ここ数年のように予算を使い切れずに多額の繰越を出し、空回りするはめになる。

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 高市首相が電気・ガス代補助を深堀りすると答弁したとき、妙に感じた。世間的な盛り上がりが薄いのに、なぜなのか。おそらく、補正予算を膨らますにあたって、予算の積み先に困っているのだろう。経済対策で給付金を積み上げるのなら、執行上も可能だが、今年は、やらないことになった。代わりを探すのは、規模からいって容易ではない。実務を担ぐ役所の苦労がしのばれる。

 補正予算というと公共事業が定番だが、今は建設会社も手一杯で受け切れない。予算を積んでも執行に苦労するのは目に見えているし、本来、経済対策は、需要不足を補い、供給力をフル稼働させるためのものだから、すでに供給力が伸びきっているところに予算をつけても意味がない。業界的には、供給力を整えつつ成長するために、中期的に安定して需要を増やすような政策を取ってほしいところだ。

 給付金とか減税とかは、供給力を考えなくて良い点で楽だが、それでも、再分配の制度インフラがない日本では一苦労である。コロナ禍で酷い目にあって5年経っても、給付つき税額控除のような低所得者に還元する制度の整備は手つかずである。「手取りを増やす」で有権者の反乱が起きたのは、財務省厚労省という給付官庁が、いつまでたっても答えを出さないからであり、今回は、電力会社や石油会社が代わりをつとめることになる。

 経済対策では、消費全般を強め、売上一般を安定的に伸ばし、設備投資を促さなければならない。電気やガソリンを安くすると、それらの消費が伸びて、投資が進むかというと、違うだろう。輸入増で成長を減らすことさえある。あとは、そこで節約した分が他の需要に回るという間接的効果になる。所得の還元であれば、安くて供給力のあるものに向かい、経済を成長させるのであり、賢い財政支出になるはずだ。

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 エコノミストの皆さんには、積極財政で円安地獄みたいな表面的評論で済ませてほしくないんだよね。補正予算は14兆円で前年並み、経済対策はガソリン減税とか財政投融資で膨らませるというのは、やっぱりというところだ。執行を考えたら安易に積めないし、積んだにしても、空回りして見せ金になるだけで、インフレが進んで円安とはいかない。むしろ、実態を分からずに煽って、思惑が円安を呼ぶくらいかな。

 

(今日までの日経)
 中国、日本渡航の自粛を呼びかけ 高市首相の台湾発言に態度強硬。経済対策の規模17兆円台で調整、歳出は前年度超え14兆円。補正予算20兆円超えれば円売り加速も。トヨタ、米に1.5兆円投資。円下落、155円台。積極財政派、補正予算「前年超え」提言。英国民400万人、働かず給付金。

11/12の日経

 10月の景気ウォッチャーは前月比+2.0と、普通なら好調と言いたいところだが、春先の低下から、ようやく戻しただけである。春先の不調は物価高が背景で、その後、トランプ関税の不安心理はあれど、定額減税の剥落で夏場の盛り返しも弱かった。2024年は、定額減税で上手く行ったのだから、安易にやめなければ良かっただろうに。そうこうしていたら、日銀も利上げ路線をやめてしまい、円安がぶり返している。どうして、この国は、上手く行っていた政策をやめたがるのかね。おかげで、財政再建の目標には到達したけどね。

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 その財政再建の目標は何のためにあるかというと、財政への信用を保つためなんだよ。信用を保たないと、金利や為替に暴れられても困るからね。インフレで財政破綻するより、こちらが先に来ることになる。基礎的財政収支を均衡させるという目標は説得的なものなので、これを変えることは意味がない。せっかく、当初予算の段階で達成したわけだし、歳出の自然増以上に税収が増える状態にもなっている。

 あとは、補正予算をすると均衡を割るのをどうするかに問題は絞られる。常識的には徐々に規模を縮小するしかない。一気に切れば、景気に悪影響が出るし、無暗に拡大したら、物価高に拍車をかける。今なら、上手くいった前年並みにするのが安全だ。14兆円もあるから、相当なことができ、目玉の危機管理投資は、財政投融資に逃がせば済む。そして、前年並みでも、インフレと成長の分だけGDP比の規模は縮む。

 財政というのは、需要を安定させるように舵取りするのが大事で、そうしないと、生産や投資の期待に悪影響を与え、景気を不安定にしてしまう。コロナでバカみたいに大きな補正を打ったときも、それで需要が爆発するとは誰も思わなかったから問題なくできたし、逆に2014年の消費増税の際に一気の緊縮したときは、税の大元の成長を失わせてしまった。経済あっての財政とは、需要を安定させることが、結局は財政の安定にもなるのである。

 

(今日までの日経)
 旅行黒字の伸び鈍化、デジタル赤字打ち消せず。円安防止策、にじむ米の意向。「戦略的あいまい」貫けず、台湾有事答弁。原発・送配電に公的融資。食料品購入に 地方交付金を増額。減価償却費の一括計上案。為替市場、薄れる円高機運。難しい自然利子率の推計。