昔、経済対策で全生徒にパソコンを配ってはどうかという愚策があった。そんな一気の供給力はないし、需要の急増と急減で産業を壊しかねない。馬鹿な思いつきだけど、安全保障の投資でAIを構築するとして、GPU半導体は確保できるものなのか。このように、補正予算で規模を膨らますのは簡単でも、予算執行のフィージビリティも考えないと、ここ数年のように予算を使い切れずに多額の繰越を出し、空回りするはめになる。
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高市首相が電気・ガス代補助を深堀りすると答弁したとき、妙に感じた。世間的な盛り上がりが薄いのに、なぜなのか。おそらく、補正予算を膨らますにあたって、予算の積み先に困っているのだろう。経済対策で給付金を積み上げるのなら、執行上も可能だが、今年は、やらないことになった。代わりを探すのは、規模からいって容易ではない。実務を担ぐ役所の苦労がしのばれる。
補正予算というと公共事業が定番だが、今は建設会社も手一杯で受け切れない。予算を積んでも執行に苦労するのは目に見えているし、本来、経済対策は、需要不足を補い、供給力をフル稼働させるためのものだから、すでに供給力が伸びきっているところに予算をつけても意味がない。業界的には、供給力を整えつつ成長するために、中期的に安定して需要を増やすような政策を取ってほしいところだ。
給付金とか減税とかは、供給力を考えなくて良い点で楽だが、それでも、再分配の制度インフラがない日本では一苦労である。コロナ禍で酷い目にあって5年経っても、給付つき税額控除のような低所得者に還元する制度の整備は手つかずである。「手取りを増やす」で有権者の反乱が起きたのは、財務省や厚労省という給付官庁が、いつまでたっても答えを出さないからであり、今回は、電力会社や石油会社が代わりをつとめることになる。
経済対策では、消費全般を強め、売上一般を安定的に伸ばし、設備投資を促さなければならない。電気やガソリンを安くすると、それらの消費が伸びて、投資が進むかというと、違うだろう。輸入増で成長を減らすことさえある。あとは、そこで節約した分が他の需要に回るという間接的効果になる。所得の還元であれば、安くて供給力のあるものに向かい、経済を成長させるのであり、賢い財政支出になるはずだ。
(図)

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エコノミストの皆さんには、積極財政で円安地獄みたいな表面的評論で済ませてほしくないんだよね。補正予算は14兆円で前年並み、経済対策はガソリン減税とか財政投融資で膨らませるというのは、やっぱりというところだ。執行を考えたら安易に積めないし、積んだにしても、空回りして見せ金になるだけで、インフレが進んで円安とはいかない。むしろ、実態を分からずに煽って、思惑が円安を呼ぶくらいかな。
(今日までの日経)
中国、日本渡航の自粛を呼びかけ 高市首相の台湾発言に態度強硬。経済対策の規模17兆円台で調整、歳出は前年度超え14兆円。補正予算20兆円超えれば円売り加速も。トヨタ、米に1.5兆円投資。円下落、155円台。積極財政派、補正予算「前年超え」提言。英国民400万人、働かず給付金。