シリーズ経済思想
リーマン後に日本化と言われた米国は、コロナ後、一気に加速した景気が衰えず、利下げに難渋している。他方、リーマン後に世界経済を引っ張った中国は、ゼロコロナでデフレに陥り、日本化が進む。なぜなのか。こうした対称的な動きは、経済の原理を考える上…
現実の経済を理解できるか否かは、金利は効かないと悟れるかにある。ところが、インセンティブが効かないはずがないという強い信念が働き、そうした境地には、なかなか至らない。デフレ脱却が絶望的でも、異様な金融緩和に10年もしがみついたのは、結局、こ…
1-3月期のGDPは前期比が-0.5%、年率で-2.0%に沈んだ。家計消費(除く帰属家賃)が前期比-0.8%、寄与度が-0.5もあるのだから仕方がない。正直、ここまで落ちるとは思っておらず、デフレーターが前期比で1.1%も上がったのが大きい。名目では前期比+0.2なので、い…
門間一夫さんの『日本経済の見えない真実』の中で、最も感慨深かったのは、サービス業の代表として散髪を例に挙げ、需要が生産性を伸ばすことを分かりやすく説明したところ(p.101-3)だった。世間では、この「真実」が分かっていないために、緊縮財政で消費を…
コロナが収束して、飛行機で出かけられるようになり、旅のお供は、岩井克人先生の『経済学の宇宙』と相なった。文庫で追加された補遺の「不均衡動学の現代版に挑む」から読み始め、70歳にしてと不屈の探求心に驚きつつ、最初からひと巡りして、また吟味する…
みずほR&T・門間一夫さんの「経済成長のためには生産性を高めることが必要だという議論は、完璧に正しいが、無内容」*は至言だね。このトートロジーは、「どうすれば経済成長を高められるのか本当はよくわからないという不都合な真実を、生産性という言葉の…
日経でお見掛けして以来、櫻川昌哉教授は慧眼の持ち主だと思っていたので、新著『バブルの経済理論』を書店で見つけたとき、齢だから分厚いのはきついけど、著者名だけで買ってしまった。むろん、期待どおりの中身の濃さであり、本コラムの見方とは違うが、…
この国が落ちぶれていることは分かっていたが、「日本と技術フロンティア国のギャップが1990年代以降のように著しく拡大するのは、鎖国の江戸時代末、太平洋戦争敗北の前後に次いで3回目」と、歴史上の大失敗に位置づけられるのは、この間を生きてきた者にと…
利益を最大化しようという行動原理の下では、効率的市場が立ち現れる。そこでは、資金も、人材も、ムダに捨て置かれたりはしない。ところが、実際には、カネ余りと失業が長く続くことはざらにある。そうすると、主流派経済学が大前提とする利益最大化に誤り…
日本は、物価、消費、賃金、投資、成長が停滞する「低温経済」である。物価は、需要と供給で決まるものなので、物価が上がらないのは、消費が乏しいからと、すぐに察しがつく。なぜ、消費が乏しいかと言えば、アベノミクスでは、消費税と社会保険料を引き上…
こういう一冊を待っていた。松下貢著『統計分布を知れば世界が分かる』である。経済学ではリスクの扱いが要になる。経営者が利益を最大化すべく合理的に設備投資をするには、リスクを期待値として見積れなくてはならない。ところが、リスクは、分散が大きく…
L・ランダル・レイ教授の『MMT 現代貨幣理論入門』を読ませてもらったが、肝心なことを語っていないように思うね。MMTは、煎じ詰めれば、「財源には制約がないのだから、失業がある限り財政を使うべし」という考え方になる。肝心なのは、その失業が、なぜ、…
未来に収穫するコメを、今、食べるなんて、不可能なことくらい、誰でも分かる。ところが、財政学者は、「国の借金は将来世代の負担になる」と軽く言ってくれるんだよね。今の世代が財政赤字を出して消費を増やしたら、将来世代が消費する分が減ってしまうの…
主流派経済学の根本的な欠陥は、ヒトの時間の制約を考えないことである。ヒトは利益を最大化するよう行動することを公準に据えているが、人生は限られていて、分散が効かず、変動リスクの下では、大損を避けようと、期待値に従わずに、敢えて収益の機会を捨…
一般の方が経済学から最も知りたいことは、景気を良くする方法である。景気の原動力は設備投資なので、それをどうすれば盛んにできるかに言い換えられる。主流派経済学の処方箋は、その収益性を高めるため、低金利、低賃金にすれば良いというものだ。しかし…
新進気鋭の若手の経済書を読むのは、実に楽しいね。イェール大・伊神満准教授の『イノベーターのジレンマの経済学的解明』は、とても読みやすく、構造分析がどんなものかがイメージできる好著だ。世間では、「バカだから失敗した」と一刀両断にする言説が多…
金融危機が起こるのは、人々が理不尽に行動するからだ。株や土地といった資産を、こぞって買えば値上がりし、それで儲かったと思って更に買うと、バブルが膨らむ。お金と言うか、信用と言うか、貨幣が膨張の限界に達したときに弾け、敗者を生んで、値は元へ…
経済は、昔も今も、成長と平等が目標だ。どうやって実現するかと言うと、まず、輸出を増やすことで設備投資を引き出し、高投資の経済構造にして成長率を高める。これが進行し、労働需給が締まって、賃金と物価が上がるようになると、所得は広く行き渡るよう…
久々に良い経済書に出会ったね。アルビン・E・ロス著『フー・ゲッツ・ホワット』だ。2012年のノーベル賞受賞者が、副題のとおり「マッチメーキングとマーケットデザインの新しい経済学」について、命が救われる感動的な具体例を引きつつ、分かりやすく説明す…
理論がないと、データから意味を引き出せないとされる。裏返せば、妙な理論を持ってしまうと、現実を認識できなくなることもある。経済学で言えば、ヒトは利益を最大化するという信念を持っていると、社会的なムダである余資も失業も、この世には存在しない…
指数分布やべき分布が観測される社会的実例が載っているだけで、筆者にとっては十分に魅力的だったが、矢野和男著の『データの見えざる手』は、なかなか興味深く、未来も感じさせる内容で、楽しく読ませてもらった。日本の愚劣な経済運営を論じていて、嫌気…
4/10に2月の機械受注が発表され、前月比8.8%の大幅減だった。1月の13.4%増から単に大きく振れただけでなく、3か月移動平均でもマイナスであり、1-3月期の受注も前期比2.9%減となる見通しであることから、内閣府も基調判断を下方修正したようだ。設備投資は、…
ガラス板を破壊すると、破片は幾つかの大きなものと無数の粉々のものになり、その構成がべき分布になるというのは、よく知られていて、べき分布の典型例として挙げられることも多い。ところが、それは高いエネルギーで破壊すると、そうなるのであって、低い…
『経済学は何をすべきか』という本は、岩井克人先生も執筆されていて、十分に楽しませてもらったが、編者が記されておらず、和書では定番の「まえがき」や「あとがき」もない、やや珍しい体裁であった。そのため、なぜ、こうした根源的なタイトルがつけられ…
偉ぶらない語り口が酒井泰弘先生の魅力で、『ケインズは今なぜ必要か』(ケインズ学会編)に収められた講演も、そんなヒューマニティーが読み物として楽しいものにしている。もちろん、中身の方も経済の本質を考える上で、なかなか含蓄が深いものだ。今回は、…
「ケインズが対象として考えている経済は、自分の力だけでは完全雇用を自動的に達することができず、放任すれば過少雇用の均衡状態に陥ってしまうような体質の経済であるから、かりに政策の処方を講ずれば完全雇用が達成維持できるとしても、そこでの調整メ…
(前編 デフレの論理) 2011年秋、物理学者を色めき立たせる出来事があった。名古屋大などの国際研究チームが、素粒子ニュートリノが光より速く飛んだという実験結果を発表をしたからである。残念ながらと言うか、やはりと言うか、翌年には、実験が誤りであっ…
(後編 バブルの論理) マクロ経済を観察していると、景気後退が緩ければ、金利を下げて調整することが可能でも、これが急であると、金利での調整がまったく効かない状態に陥ってしまう。そして、更に激しい場合には、デフレがデフレを呼んで加速するようにな…
法則はデータから導かれなければならないが、経済学では、そうした傑出したデータに、なかなかお目にかかれない。その貴重な一つに、赤羽隆夫先生が見つけた「家計の消費率は一定」という「法則」がある。具体的には、「家計調査において、非食料消費が実収…
日本人は「経済構造」という言葉が好きである。むろん、その後には「改革」と続く。困るのは、人によって、言うところの「構造」が違っている上に、最も基本となる「構造」については知らなかったりすることだ。その基本とは、GDPに占める消費ないし貯蓄(=投…