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経済政策と社会保障を考えるブログ

財政再建の再設定は無用である

 高市首相は基礎収支の黒字化を数年単位で判断すると言うし、諮問会議のメンバーも変わるしで、財政管理の方法は変化するようだ。従来の欠点は、黒字化の年限を切ったことで無理な緊縮が求められること、税収の見積もりが過少なこと、社会保険が度外視されて全体的管理が欠如していたことの三つである。どれも財政による安定的な需要管理を阻害するものだった。

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 日本の財政が拙いのは、景気が上向いたときに、一気に補正予算を切って成長にブレーキをかけていたことだ。財政再建を焦る気持ちは分かるが、徐々にやらなければならない。岸田政権の定額減税は成長を支えたのに、石破政権はあっさりやめて、消費の不調を招いている。高市政権も定額給付を切るのは良いが、ガソリン減税がその代わりになるのかは、よく考えなければならない。

 財政による安定的な需要管理が重要なのは、設備投資は需要を見ながらなされるからである。せっかく、投資して生産したのに、政府が緊縮で消費を冷やしていたら、企業はハシゴを外された形になる。教科書とは違い、設備投資を動かすのは、金融政策ではなく、需要管理である。物価ですら、金融政策は無力であり、需要超過による物価高は、消費増税ですぐさま冷やすことができる。

 財政の現状は、当初予算の段階で基礎的収支の黒字化を達成している。財政再建の目標としては、これで十分である。目標の再設定は無用だ。財政再建は、財政の持続可能性にリスクを感じさせないことが本質であり、「補正予算をやめれば、すぐに持続可能になる」との認識によって、信用不安を持たせずに済むからである。あとは、補正予算の規模を、そのときどきの状況に応じて決めていく。

 今なら、補正予算は前年並みの規模とし、来年度予算は税収増で締まらない程度の歳出拡大なり減税なりをセットすれば良い。これで、十分に高市政権がやりたいことはできるはずだし、インフレを加速するものにはならず、財政の信用リスクを高めたりもしない。あとは、使い途のバランスの問題となる。「成長投資」に偏りがちだが、消費の着実な増大も設備投資を引き出すのに必要だからである。

(図)

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 高市政権の危機管理投資という産業政策の切り口は悪くない。しかし、低金利と同様に、低率の補助や減税という手段では効果が薄い。やるなら、外資の設備投資の誘致は別として、財政投融資を使うべきである。巨額の補助金を必須とするようでは、資本の棄損を見込んでいるということであり、プロジェクトとして適当ではない。それは、不効率な産業の保護政策になるので、必要性の吟味がいる。

 

(今日までの日経)
 「大胆な減税」成長投資促す。人手不足、逃した16兆円。非製造業の7割が増益。首相、基礎収支の黒字化「数年単位で判断」。財制審、補助金頼み「出口戦略を」 産業支援、出融資活用促す。年収の壁(中) 「あと8万円働ける」。