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経済政策と社会保障を考えるブログ

財政・金融政策の「ためにもならない議論」

 10月のCTIマクロは、名目が前月比+0.3と7か月ぶりの高い伸びだった。4~9月に伸びが弱まっていたので、ここから戻せるのか、意外に重要な局面にある。実質が-0.3と、物価高の強い影響と併せて注目されるところだ。こういう状況を受けて、財政・金融政策はどうあるべきか、現実的に考えなければならない。どうも、財政・金融政策は、理論闘争に走りかちで、地に足がついていないように思える。

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 財政再建は何のためにやっているかというと、長期金利が跳ねないようにするためだ。財政破綻の前に、これが来るわけだし、クリントン政権の初めのように、財政再建に取り組むことで長期金利を低下させ、成長を加速させたこともあり、欧州危機の際のイタリアのように、基礎収支が悪くなくても、国債金利の高まりで行き詰まることもある。高市政権は、若干ながら基礎収支を前年度より改善したのに、「無責任」と叩かれるのは、長期金利の高まりがあるからだろう。

 消費の状況からすると、財政は、若干の拡張くらいがマッチしている。高圧経済が必要でもないし、一気の緊縮で財政再建目標の達成を狙う必要もない。財政のリミッター解除みたいな議論は有害無益だ。むしろ、そういう議論が、あらぬ財政を呼び込むのではないかという疑念を深め、長期金利を上げる方向に作用し、積極財政を邪魔してしまう。市場は、実際の財政でなく、机上の暴論に反応している。

 このところの長期金利の上昇は、財政要因というより、植田日銀が円安に追い込まれ、利上げを余儀なくされるという読みからである。もっとも、10年国債が2%になったからといって、物価目標からすれば整合的だし、政府経済見通しの2026年度物価も1.9%で、サービス物価の前年同月比は2%程で安定して推移しているのだから、おかしくはない。逆に、預金金利が物価高に大きく負けている状況が不自然だとも言える。

 金融政策は何のためにやっているかというと、為替の安定のためである。金利が動かせるのは、為替、金融資産、住宅投資であって、需要に左右される設備投資は動かせず、従って、物価もコントロールできない。物価を動かすのは、需要であり財政になる。しかし、実際には建前に囚われて、黒田日銀のように異様な円安進行を許したり、植田日銀のようにトランプ関税を警戒し過ぎて円安是正のチャンスを逃したりするわけである。

(図)

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 2026年度当初予算は、補正予算の税収をベースに、マクロ指標と企業業績見通しで伸ばせば、2.9兆円程の増収が見込める。他方、一般歳出は、前年度当初予算では、社会保障が+0.6兆円、防衛が+0.7兆円、その他+0.2兆円だったから、これらを前年度並みとし、加えて1.4兆円まで歳出や減税で使っても、拡張財政にならない。首相が当初から積まないといけないと言っているのは、防衛費のことではないか。

 こうしてみると、積極財政をするのにリミッター解除のような議論は必要がないし、財政が緊縮にならなければ、需要を確保できるから、景気刺激のために低金利に拘る必要もない。むしろ、利上げを擁護し、購買力からは不自然なほどの円安を是正してもらった方が消費や建設投資を増やす方向に作用する。「ためにする議論」どころか、「ためにもならない議論」ほど虚しいものはない。


(今日までの日経)
 防衛産業、経済成長の一助に。日銀12月利上げ論強まる。長期金利上昇1.95%。対米投資の対応、7.1兆円追加要求 JBIC逆輸入車、過去最多に。物価高予想、金利押し上げ。日本の防衛市場、日米争奪。バスもゴミ収集も人手不足。