食品の消費減税をしたが、物価は下がらなかった。こうなるのは、インフレの下では、便乗値上げが起こるからだ。経済政策の怖さは、意図と異なる結果が現れることである。本当に低所得層を助けたいなら、まじめに給付つき税額控除に取り組み、社会保険料の軽減を成し遂げるべきだ。日本の政治家は、こんなことも分からないのか。いや、分かっている。経済がどうなろうと、選挙に勝てれば良いと思っているだけだ。もはや、大衆迎合ですらなく、蒙昧への迎合になっているのである。
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消費減税への第一の批判は、財政を危うくするというものだ。大型の補正予算を組むような一時的なものではないし、予算を付けないより税率を戻すのは難しいので、財政の信用に対する打撃は大きい。しかも、消費減税をすれば、需要増で物価に上昇圧力がかかるのは目に見えているから、すぐに円安や金利高に影響が及ぶ。これは、なかなか厄介である。今のファンダメンタルズから外れたものから、実態に即したものに変異してしまう。
第二の批判は、経済状況に合っていないというものだ。今は需要が足りないのではなく、供給の問題になっている。消費減税で需要を増やすだけだと、供給が追いつかず、物価を上げるだけで、空回りしかねない。他方、低所得層の社会保険料の軽減なら、勤労者皆保険が実現して、非正規の労働時間の縛りがなくなり、労働供給を増やすことになる。手取りと稼ぎを増やしつつ、物価上昇も限定できるわけである。
そして、第三の批判は、何のためにやるかだ。物価高に苦しむ低所得層を助けたいのなら、別の効果的手段がある。便乗値上げのできない電気・ガス・水道の基本料を補助するでも良いわけで、それらを選ばないのは、経済の難しさが分からない国民に限って、大喜びするからでしかない。戦略目標が曖昧で犠牲を顧みない作戦を採る将軍ほど愚かなものはなく、騙すことになると分かっているのなら、これほど醜い政治はない。
(図)

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いきなりの解散総選挙となって、給付つき税額控除の議論どころではなくなった。正直なところ、低所得層の社会保険料の軽減まで行き着くかは、道が遠い状況だったが、消費減税なんかやったら、道は閉ざされてしまう。非正規を解放して経済を成長させ、少子化を緩和して年金や医療も安定させるという極めて重要な経済政策なんだがね。本当に救われない話だと思う。
(今日までの日経)
給付付き控除棚上げ。維新、食品消費税ゼロ。二人っ子政策から一転・アジア諸国。大型工事、縮む受注余力。外食大手、純利益7%減。銀行の「余裕資金」低水準。25年度補正予算では7基金が新設。探索投資、支える体制を・青島矢一。DeepSeek登場から1年。