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育児休業給付を、子が生まれて受け始める女性は、2020年度が37.3万人だった。この年の出生は85.3万人だから、受給者の比率は44%と半分以下でしかない。これでも、5年前の2015年度は29%に過ぎなかったので、上がってはいる。その要因は、受給者が+7.8万人増えた一方、出生が-18.1万人も減ったからだ。2020年度の平均受給月額は13.5万円、平均給付期間は12.1か月と推測される。給付総額は6,200億円であった。
この際、すべての女性に育児休業給付を支給したとすると1兆4,200億円になるから、さしあたり、あと8,000億円あれば、実現できる。給付の拡大に効果があって、数年後、合計特殊出生率が2020年の1.33人から若者の希望を満たす1.80人まで回復するとしても、更に5,000億円あれば足りる。税収の急増によって、財政再建の目標を9.5兆円も過剰に達成しようという国が、これくらいのこともしないのか。
少子化の緩和は、克服まで至らなくても効果は大きい。出生率が直近の2021年の1.30人だと2世代で人口が61%も減ってしまうが、1.80人だと25%の減にとどまる。年金などの世代間の負担比は、出生率が1.30人だと子世代は60%増しの負担になるが、1.80人だと16%増しで済む。「損」にはなるが、一世代の間の経済成長を踏まえれば、その範囲内で負担できる。少子化の緩和を諦めてはいけない。
この国は、炭素税がなくても、脱炭素の成長戦略に財政を投入するのは熱心だが、このまま、人口が激減したら、おのずとCO2の排出は減る。「少子化対策は増税とセットで」という考え方に拘り、子ども保険の導入などの財源の問題で揉んでいる間にも、少子化は深まっていく。財政を「黒字」にして持続可能にしても、人口を激減させて社会は持続不能のまま放置というのは、何かが狂ってはいないか。
(図)

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2022年1-4月の出生数は、最低だった前年を更に-3.1%下回る危機的な状況だ。こうなると、参院選後、本当に問題になるのは公的年金だろう。前回の財政検証では、少子化の緩和で助けられたところがあったが、今度は逆向きなので、給付水準の所得代替率50%を調整期間後も維持できるかが焦点になる。割れても我慢するか、維持するのに保険料を上げるか、究極の選択が待っている。
しかし、そうした選択そのものから脱し、少子化を緩和する具体策をもって展望を開く方がはるかに生産的である。育児休業給付を普遍化し、児童手当を合わせれば、月額15万円になる。「結婚しても何とかなる」と思える社会状況にしてあげなければ、子供が生まれるはずもない。かつては、「一つ口は食えぬが、二つ口は食える」と言って励ましたものだ。次の世代のために何をすべきかが問われる。場当たりでポイントを配るばかりが経済政策ではないよ。
(今日までの日経)
節電参加の家庭にポイント2000円分 政府が検討表明。物価上昇、体感は2倍。欧米長期金利、景気不安で低下。TSMCに巨額支援、還元不透明。国民年金、免除・猶予は最多612万人。25年特需一巡か、国債消化に影。英、寿命に合わせ年金支給。