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経済政策と社会保障を考えるブログ

公的年金を巡る愚かな批判

 今年は、5年に一度の公的年金の改正で、ネット上では損得論が盛り上がっているが、厚労省の方針は改革というよりメインテナンスであって、正直、淡々と進めれば良いものだ。批判は、「俺のカネに手をつけるな」の発想に過ぎず、長生きのリスクへの代償であることがまるで分かっていない。損得論は、並みの経済学者でも間違うような難しいものであり、生兵法はケガの元にしかならない。

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 公的年金の積立方式への転換や、その背景にある世代間の不公平論がいかに無意味かは、本コラムでは10年以上前に書いている。「ここだけ違うのはなぜ」とか、「世代間の不公平を煽るなかれ」、「世代間負担論の到達点」とかだ。方式転換は、もはや現実味がなく、世代間の公平は、まともな経済学者は論じなくなった。いまさら、それを引っ張り出すのは、一知半解の素人に過ぎず、言っても聞かないので、正直、相手にしたくない。

 今回の年金改正で本当に議論すべきは、足下の少子化の激化にどう対処するかである。現行制度は、子供のない人を積立金と税で支えているのだが、耐えられるのは合計特殊出生率が1.4人程度までで、足下の1.15人では賄い切れず、払った保険料に見合う給付にできなくなるという困った状況になりかねない。少子化を押し戻すか、年金制度には人口増に等しい適用拡大を徹底しなければならない。

 しかし、適用拡大は漸進的だし、低所得層の負担軽減をしないので、生活苦が結婚の確率を下げるかもしれない。また、週20時間労働で線引きをするため、ここに待遇を押し込められるおそれもある。もっとも、この問題の解決には、給付つき税額控除の導入が必要で、厚労省の手に余るものだ。新聞を含め、識者に批判してもらわなければならないのは、本当は、このあたりである。

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 社会保障基金が貯蓄していたのは2001年度までであり、近年になって貯蓄に転じたものの、それまでに取崩した分も戻せていない。日経の言いぶりに煽られて「厚生年金の積立金を国民年金に充てるな」と主張する人もいるが、貯蓄を続けた人たちは85歳で給付も終わりが近い。主張者の多くは貯蓄に貢献してないだろう。そんな損得に拘るより、現状は年金が黒字にならざる得ないのだから、消費を無闇に抑制しないよう、財政で負担を軽減しなければならない。年金では、役所の視野を超えた批判が求められる。

(図)



(今日までの日経)
 上場企業、最高益続く 非製造業けん引。高額療養費、予算案は96年度来の修正へ。キノコ、高いけど手ごろ。高校無償化、私立高の支援金引き上げ。トランプ氏が相互関税指示。米消費者物価「1月ショック」。企業物価、1年7カ月ぶり4%台。共働き、所得増えても貯蓄。