経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるブログ

年金・改革主義の亡霊

 自民党総裁選は、9/29の選出を目指し、政策論議がたけなわだが、年金が論点になるとは思わなかった。しかも、一昔前に葬られた税方式と積立方式を組合せた改革案の復活とはね。理屈としてはスッキリしていても、少子化が年金財政に与える問題の本質を外した「間抜けな」提案に過ぎない。ここに迷い込んだために、いかに時間をムダにしたことか。それを繰り返さないことを祈らずにはいられない。

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 現在の賦課方式を積立方式に変える過程では、親の年金を負担しつつ、将来の自分の年金を蓄える「二重の負担」が避けられない。しかし、支えてくれる子供を持つ者にとっては、わざわざ積み立てる必要性がない。「二重の負担」は、子供を持たず、蓄えに頼るしかない者がすれば、十分なのである。全体の3割程の子供を持たない者のために、なぜ、全員が方式を変えて「二重の負担」をしなければならないのか。訳が分からないだろう。 

 では、現在の制度で、子供を持たない者をどう支えているかというと、おおむね、積立金と税で支える勘定になっている。子供を持たない者に2倍の負担をしてもらうことは、年金数理的には正しくても、ペナルティーのように受け取られ、感情的に受け入れられないだろう。また、低所得ゆえに持てない人も多いから、負担をしろと言っても無理がある。だから、皆で支えるという選択になる。

 また、基礎年金を税方式にすることは、増税ができれば、もちろん可能だ。しかし、それまで収めてきた保険料の履歴を御破算にし、一律の給付にするとなれば、かなりの不公正感が出よう。年金は白地で改革するわけにはいかない。低年金を防ぐなら、非正規への適用拡大という正攻法で行くべきで、ハードルとなる低所得者の保険料を税負担で軽減すれば良い。2兆円程度で可能であり、自然増収の範囲でも収まる規模だ。

 少子化は社会を細らせる以上、いかに年金の方式を変えようとも、苦境から逃れられない。唯一の道は、少子化を緩和することだけである。それができれば、子供を持たない人のための税負担が軽くなり、低所得者の保険料の軽減へも回せるようになる。少子化対策の欠陥は、非正規の女性には育児休業給付がないことである。生活の保障なしに、どうやって子供を持てというのか。対象を拡大するのに1兆円もかからない。

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 日本がデフレに沈んで以来、「改革」が声高に叫ばれたが、本当に必要なのは、地道な制度の「拡張」である。デフレ下での保険料の忌避により増大した非正規に、制度の保護をもたらすべく、税の自然増収を還元していく。それをせず、すべてを財政収支の改善に充ててきたために、デフレと少子化から脱せられず、閉塞感を拭えないのである。野党にしても、せっかく消費税を上げたのだから、下げで人気を取りにいくのではなく、集中して還元することを考えるべきであろう。


(今日までの日経)
 非正規21万人減 上場企業の昨年度。新興国、高まる債務リスク ドル高進行の負担重く。コロナ「生活水準低下」24% 年収少ないほど打撃実感。