7-9月期資金循環では、財政赤字を示す一般政府の資金過不足が、4四半期移動合計の名目GDP比で、-0.5%まで縮んだ。このトレンドだと、新年度には財政黒字に達することになる。すなわち、石破政権下で財政再建がほぼ完了し、高市政権の積極財政は、黒字を拡げないような位置づけになる。緊縮を無用にしただけで、インフレだ、高金利だ、財政破綻だと騒ぐのは、大仰に過ぎる。経済を方向性だけで語るのはナンセンスだ。
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財政再建がほぼ完了しているのに、そう思えないのは、「国」の財政赤字はGDP比で-2.2%もあるからだ。他方、地方が+0.4%、社会保障が+1.2%もの黒字になっていて、差し引きが-0.5%になる。地方は健全で、社会保障が雇用増と賃上げで潤っているという認識が欠けている。そうでなければ、わずかとはいえ協会けんぽが保険料率を下げたりはしない。全体像を見ないという、日本のいつもの悪癖が発揮されているわけである。
2026年度の税制改正は、日経によれば、財源は1兆円足りないだけのようである。これなら、2026年度の税収増は、企業業績見通しが上方修正されたこともあり、3.1兆円が見込まれるので、何ら問題がない。2026年度予算の一般歳出の決定はこれからだが、例年並みの0.5兆円増を超え、2兆円まで伸ばしても「均衡」財政だ。補正で予備費を0.7兆円積んだので、その分、本予算の予備費を下げ、均衡のまま、2.7兆円まで伸ばすこともできる。
しかも、地方と社会保障の黒字は拡がるので、一般政府で見れば、財政健全化も進むことになる。これで、どうして財政要因で金利が上昇すると叫ばねばならないのか。利払い費は増えても、名目GDPの拡大に見合っていれば問題はないし、金利が上昇すれば、国債より数倍大きい金融資産に対する税収も伸びる。その点は富裕層課税で強化もされる。そもそも、企業業績の上方修正は金融業だったりする。
税制改正で問題なのは、量より質だ。所得減税は、岸田政権の定額減税並みに膨らんだのに、低所得層への重点配分ができず、社会保険料にある本物の「年収の壁」も放置だから、賢明な支出とは言えない。ここでも、全体像が見えていない。議論は、給付つき税額控除へ移るが、大黒字の社会保険料には、そもそも所得控除がない。今回の所得減税の所得階層ごとに負担を軽くする方法こそ、社会保険料に求められるというのは、何とも皮肉である。
(図)

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植田日銀は利上げに踏み切ったが、案の定、円安になった。為替の投機は、方向性で儲けるので、水準を上げても、植田日銀はひよわと見切られれば、円安は是正できない。黒田日銀は、ワイルドな異次元緩和で方向感を変えたので、為替を操作できた。植田日銀に勝負勘を求めるのは酷だろうが、どうして7月にひよったかである。結局、トランプ関税への対応は、自動車の環境性能割の廃止で済んだことを思うとなおさらだ。そちらは財政の役割と割り切り、円安是正に注力すべきだった。低金利に力があると考えるようでは、リフレ派と大差ない。
(今日までの日経)
2.2兆円の財源確保が焦点、1兆円ほど足りていない。年収の壁引き上げ、中所得者に恩恵 年収600万円で減税3.6万円 6500億円程度の減収。車購入時の課税「環境性能割」廃止、約1900億円。給食無償化、3000億円規模。海外勢、日本株買い越し5兆円超。縮む日米金利差、続く円安なぜ。